
これまでに報告されているいくつかの多施設共同研究でも、侵襲的な心臓カテーテル検査と比較して、検査の感度は約85-90%、特異度は約96-98%と報告されています。特徴的なのは、高い陰性的中率(冠動脈狭窄が存在しないことを証明する力)で、約93-100%との報告が多いです。これは、心臓CTで大丈夫であれば、かなりの自信を持って冠動脈疾患が存在しないと言えるということになります。実は心臓を扱う循環器の医者にとって、この断定できるという力は大きな魅力です。もちろん、心臓病ひいては心臓突然死の不安を抱える患者にとっても、「ほぼ間違いなく大丈夫」というコメントがもたらす安心感は非常に大きいと思われます。
この心臓CTの特長を生かして、最近では、急に胸が痛くなり急性心筋梗塞との鑑別が問題となる急性胸痛患者における心臓CTの有用性が注目されています。米国での1,000人の急性胸痛患者に対する多施設研究から、心臓CTを最初に用いる診断方法の有効性の報告がされています。心臓CTを最初に用いる方法(501人)と心臓CTを用いない従来の診断方法(499人)で比較した結果では、入院の期間、救急室から直接退院の割合ともに心臓CT群で短く、だからといって、退院後に心筋梗塞や心不全が増えたりはしないと報告されています。このような研究成果からも、急に胸が痛くなった時に、まずは心臓CT検査を受けることが推奨されます。
まとめとして、心臓CTの特徴、利点と欠点、他の冠動脈撮影が可能な検査との対比を示します(Table 2)。

2.冠動脈石灰化スコア(非造影心臓CT検査)

冠動脈石灰化は動脈硬化の鋭敏なマーカーと考えられており、冠動脈石灰化スコアを従来の危険因子にさらに付加することで、より正確に冠動脈疾患の危険度を予測することが可能になることが報告されています。冠動脈石灰化スコアは、ヨード造影剤を使用する必要がなく、少量のエックス線被曝で撮影することが可能であり、臨床的有用性の報告も豊富です。また、視覚的にも容易に確認でき、患者も病態を理解しやすいという側面もあります。
但し、冠動脈石灰化が存在しない症状のある患者の3.5%に心臓CT上の有意狭窄(治療の必要な病変)が存在するという報告があることも事実であり、石灰化スコアだけで冠動脈病変を完全に診断することは不可能であることも事実です。しかし、石灰化スコアが<100の患者の心臓病のイベントは1年につき0.4%であり、冠動脈疾患を合併している可能性は低いと考えられています。






