心臓MRI検査
MRIとは、簡単に言うと磁石と電波を使って身体の中の水や脂肪にたくさんある水素の原子核の状態を絵にする方法です。MRIでは、まず地球の磁気の数万倍の強さをもつ磁石を装備し、均一な磁場を作り出す筒状の装置が必要です(図内A)。この均一な効力磁場を作り出すことに非常に高い技術が必要で、それがMRI装置が高額であることの原因です。また、身体から発生するラジオ波の信号を受信するために、それぞれの身体の部位に応じた受信コイルが必要です。心臓の場合には心臓専用受信コイルになります(B)。均一な磁場を持つ磁石の筒の中に体を入れ、短時間の間にラジオ波を照射し、ラジオ波を止めたときに身体から出てくるラジオ波を受信して画像を作り出しています(C)。さらに細かく見ると、身体の中にある水素原子核の「スピン(回転)」の様子を画像化していることになります(D)。
まず、水素原子核を、強力な磁場の中で一定方向に行儀よく揃えます。次にラジオの周波数帯の弱い電波を照射して、体のある断面の中に含まれる水素の原子核に電波のエネルギーを吸収させます。そして電波の照射を止めると、吸収されたエネルギーは放出されて元に戻り、そのときに得られるラジオ波の信号をコンピュータで画像化します。なおMRIでは電波を当てるたびに機械の振動音が発生し、それがかなりうるさい場合もあります。これがMRI検査で聞こえる大きな音の原因です。大きな利点として、MRI検査は放射線を使わないので、「被曝」の心配は全くありません。
また、心臓MRIでは放射線被曝なく、造影剤を使用することなく、冠動脈を描出することが可能です。同時に心臓のポンプ機能(心機能)評価も可能であり、心臓MRIでの心機能評価は、最も信頼性が高いと考えられており、様々な心機能に関する臨床研究でも採用されています。また、造影剤を用いた造影心臓MRI検査は、心エコー、心筋シンチ、冠動脈造影などの従来の心臓画像診断から別々に得ていた情報を、約1時間で全て得ることができるという高いポテンシャルを持っています。そのため、海外では「総合店舗(One-stop shop)」と呼ばれています。